人を創る。
市進教育グループ50年史
企業情報

市進ホールディングス 50年史 「2011~2015年」

柔軟に、そして、したたかに
~「教える」から「学ぶ」へ~

東日本大震災が市進に与えた影響

未曾有の大震災は大混乱を招いた

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、被災地のみならず日本全国に大きな影響を与えた。市進も例外ではなかった。

塾業界では教室のスモールサイズ化と多教室展開が進んでいた。しかしながら、市進は1拠点で300人以上を集め、沿線の広い範囲をターゲットとし、生徒は電車で通ってくるという大規模な進学塾のスタイルを続けて、スモールサイズ教室は個太郎塾での展開であった。

ところが、東日本大震災によって人々のマインドは変わり、何か起きた場合に電車で通っていたのでは家に帰れなくなる、塾は地元でいいのではないかという考え方が増加した。あたかも大型総合スーパーが、コンビニの出現で厳しい道を迫られたように“大型店舗”に依存してきた市進も、大きな路線変更を迫られることになる。

そして、2011年5月に代表取締役社長は、下屋俊裕となった。

江戸カルチャーセンター

2011年9月には、日本語学校の「株式会社江戸カルチャーセンター」と幼児教育に強みのあった「株式会社桐杏学園」の株式を100%取得し、それぞれ子会社としている。

少子化の進む日本にあって将来を見据えたとき、外国人向けの日本語教育と、海外での日本語学校の設立は必然で、東京オリンピックを控えて日本語熱は世界で高まっており、赤坂に本拠を置く江戸カルチャーセンターは多くの生徒を獲得している。海外における拠点もインド、香港と増やし、現在ではインドの大学(PDPU)で日本語教育事業を行い、グルガオンで市進学院グルガオン教室を開校、香港では海外現地法人の香港市進有限公司を設立し、日本語学校と現地の日本人向けの塾を開いている。

また、幼児教育、小学校受験を得意としていた桐杏学園を子会社としたことで、小学受験から大学受験までを一貫して行う体制を整えていった。

同年11月には、学研ホールディングスと資本業務提携を結び、小学受験から大学受験まで、各々の得意分野やリソースを有効活用し、新たなシナジーの創出、並びに業務効率の推進を図ることとなる。さらに同じ月には、高齢者事業をやっていた楽ちん株式会社を子会社とすることで、介護事業へも乗り出した。その背景には、介護という社会から必要とされる分野にあって、これまで子供に寄り添ってきた経験が活かせるという考え方と、市進における社員の高齢化に対処するために、ベテラン社員の活躍の場としての参入というふたつの思いが込められている。

新規事業への積極的な展開と、見えてきた新たな教育

震災により加速した各家庭の塾に対する、「地元で通わせたい」というニーズは、震災後に起きた一過性のものではなく、明らかな流れとして定着していた。加えて、各都県では中高一貫校に力を入れるなど魅力をとりもどしてきた。市進もこの流れを受けて、2012年に都県本部制へ移行し、都県ごとに違う受験対策や試験対策への対応に力を入れるようになる。茨城県は、茨城に特化した「茨進グループ株式会社」がグループ会社となった。

2013年には、11年以降取り組んできた新規事業をいよいよ本格化させる動きとして、都県本部制の一環として千葉県・東京中東部エリアの強化方針を打ち出す。また、茨城県にあった市進学院のブランドを県内ですでに認知度のあった「茨進」ブランドに統一し、さらなる生徒獲得の足固めを進めた。

クランテテ

介護分野では、市進ケアサービスが、「株式会社学研ココファン」のフランチャイズとして、川越にてデイサービス事業をスタートさせる。デイサービス事業には新たな事業展開という側面と、自社ビルでサービス提供することによる資産の有効活用という側面があった。幼児教育においては、学研グループとの共同出資により、株式会社GIビレッジを設立し、モンテッソーリ教育を取り入れた幼児保育・学童保育の「クランテテ三田」の運営が、東京都港区で始まった。

そして、50周年を迎えた2015年、新たな市進をスタートするべく、4月には千葉県流山市の母親からの意見を取り入れ一緒につくり上げた民間学童「ナナカラ」の運営が始まった。8月には、オールイングリッシュの保育園「みらいえ」の事業を譲り受け、東京都中央区での事業運営を行っている。

10月には、個別指導塾「アンドー塾」と自立型個別学習「MANA」を運営する株式会社アンドゥが市進グループ傘下となった。

2012年に大きく業績を落とした経営も、2014年の採算がとれないエリアの教室の閉鎖と早期希望退職制度を経て、2015年度には最終利益の黒字化を果たしている。

50年前に集団指導塾としてスタートした市進は、社会の変化に合わせ個別指導をとり入れ、さらに映像教材などのデジタルコンテンツやICTも導入し、生徒の成績向上、学力向上を第一に考えることで、50周年を迎えることができた。

2020年には、文部科学省がついに大学受験のあり方を問い直す教育改革を行う予定である。今回の改革は大学受験に踏み込むため、おそらく日本のこれまでの教育体制を変えるものとなるだろう。「教える」から「学ぶ」へという流れはますます大きくなる。経営の常道を歩みつつ、環境に適応するという創業以来の方針で、市進は柔軟さとしたたかさを持ち、社会に貢献する企業でありたい。

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