人を創る。
市進教育グループ50年史
企業情報

市進ホールディングス 50年史 「2006~2010年」

多様化への対応
~ニーズの変化と社会の変化~

「ウイングネット」スタート。ICT教育の時代へ

社会全体が抱える少子化の波は、2000年代に入りさらに強まり、塾業界にも否応なく押し寄せていた。その影響が最も現れたのは大学受験だった。大学全入時代を目前に控え、2006年頃にはAO入試をはじめとする推薦入試が定着し、受験による大学入学の割合が減っていた。

この時代の流れを受けて、浪人生を対象としてきた大手予備校も、現役生獲得に本格的に乗り出した。それまで一貫して現役高校生を対象としてきた市進にとっては、苦しい状況を迎えることとなった。

ウイングネット

そうした背景のなか、2006年3月に映像配信授業の「ウイングネット」がつくられたのである。世界的にもITツールを使った学びが勃興していた時であり、インターネットの発達により、衛星放送設備と比較し多額の設備投資を必要としない商品開発が可能になった。いまでは利益の柱を担う事業のひとつであるウイングネットだが、スタート当初、映像での授業には懐疑的な見方もあった。

続く2007年3月には、パソコンを使い自学自習を促す塾「フリーウイング」専門教室の運営が始まった。フリーウイングは、結果として3年で撤退することになるが、新たな教育のメインストリームになりつつあるITを利用したコミュニティツールによる教育、ICT教育への試行錯誤の始まりであった。

2007年には、ウイングネットの外部販売も開始された。2008年2月にはZ会を運営する増進会出版社との業務資本提携を結んだ。

また、2008年5月には関西方面で学習塾を展開していた「ウィザス」との業務資本提携を結んだ。学習塾業界では、業界再編の動きが進んできた。

その一方で、連結売上高は翌2008年2月に200億円に到達。授業時間数の拡大や、新たな商品の投入などによる授業単価引き上げの取り組みと、中学入試が2007年に絶頂期を迎えるなど社会状況もあっての200億円到達だった。

学びMAXとホールディングス化

学びMAXを顧客に提示

2008年3月に導入を始めていた総合教育システム「学びMAX」は、学びの多様化のひとつだった。それまで集団指導塾こそが正しい道だという認識を持つ者もいたが、学び方をもっと自由に選べるようにするべきという議論が市進のなかに起こるようになったのもこの頃である。そこで教科ごとに個別指導と集団指導を選択できるようにしたのが、学びMAXであり、個別指導という選択肢を市進の生徒にも提示することで、個学舎の業績安定も図られた。

しかし、業界内ではすでに個別指導を専門とし、ノウハウを蓄積する競合や、集団指導に特化し顧客獲得を進める競合がひしめき、個別から集団まで「なんでもできます」と宣言したに等しい市進が勝ち抜けるほど状況は甘くなかった。結果、学びMAXが大きなヒットを呼ぶことはなかった。それでも、「集団指導ばかりが塾の進む道ではない」という意識の改革は、スタッフの心に根を張り、新たな事業を生み出す力となるのである。

2008年12月にはウイングネットのヒット作にして、現在も大きな支持を集めている「ベーシックウイング」の配信がスタートする。1コンテンツ20分という教科内容を伝えることに特化したことで、推薦入学が過半数を占めるようになった大学受験において、「学校の成績をあげたい」というニーズを的確に捉えたコンテンツとなった。

2009年には、持ち株会社制への移行準備が進められる。持ち株会社制に期待されたのは、学びMAXによって芽生えた、集団指導塾だけではない色々な業態を実現していくことだった。個性を持った“学び”を提供するいくつもの会社が、その事業に専念することで競争力をつけるという狙いがある。

2010年3月、持ち株会社制への正式な移行手続きが完了し、株式会社市進ホールディングスとして新たな第一歩が踏み出された。HD化されたことで、市進はM&Aや業務提携を積極的に進め、少子化によって縮小していく塾業界での生き残りをかけた闘いに向けた準備を整えていくのである。2010年5月には、映像制作販売会社である「ジャパンライム株式会社」の株式を100%取得し、子会社とした。

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